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スペイン旅行前に知っておきたい|1日5回の食文化と食事時間が遅い理由

ランチは14時以降、ディナーは21時以降。初めてスペインを訪れる旅行者の多くが戸惑うのが、とにかく遅い食事時間ではないでしょうか。しかも、スペイン人の食事は1日に5回。日本人からすると、かなり驚きの生活リズムで過ごしているんです。

この記事では、そんなスペインならではの食習慣について、実際に何度も現地を旅した視点からわかりやすくご紹介します。なぜ食事が遅いのか? 子どもたちはどうしてる? 健康に悪くないの? 旅行者はどう過ごせばいい?──そんな疑問にもお答えします。

ちょっと不思議で、でもどこか憧れてしまうスペインのゆるくて豊かな食文化。旅行前に、ぜひ知っておいてくださいね。

✔︎ この記事でわかること

  • スペインの1日5回に分かれた食事スタイル
  • 食事時間が遅くなる理由と背景
  • 実は長寿大国!スペイン流が健康に良い理由
  • 旅行者が戸惑わないための過ごし方のコツ
 

旅行前に知っておきたい、スペインの食習慣

サン・セバスティアンのコンチャ湾

サン・セバスティアンのコンチャ湾

スペインの食事は、1日5回&とっても遅め

スペインの食事時間は日本人(いや、むしろ他の殆どの国の人)の感覚からすると、大変遅めです。スペイン人は1日5回食事をするのが習慣で、レストランのお昼の営業は13時から、夜の営業は20時ごろからというのが一般的。

これだけでも随分遅めに感じますが、実際に現地の人たちが食事を始めるのは、お昼なら14時過ぎです。夜なら21時過ぎにポツポツとレストランに人が入り始め、22時頃にようやく前菜を食べていることも多々。

開店時間ぴったりに行こうものなら、場合によってはスタッフがまだ来ていないことすらあります。

 

スペイン人の1日5回の食事スケジュール

スペインの食事は、1日5回&とっても遅め

朝食の定番、パン・コン・トマテ

一般的なスペイン人の1日の食事スケジュールは、以下の通りです。

  • 7〜8時頃:朝食1回目(Desayuno)
    出勤前や登校前に軽くとるのが最初の朝食。コーヒーに、甘いペストリーやトースト、あるいはトマトとオリーブオイルをかけたパン(パン・コン・トマテ)など、ごくシンプルな内容。
  • 10〜11時頃:朝食2回目(Almuerzo)
    午前中の仕事や授業が一段落したタイミングで取る、2回目の朝ごはん。ボカディージョ(スペイン風バゲットサンド)やフルーツなどを軽くつまみます。
  • 14〜16時頃:昼食(Comida)
    スペインの食事の中で、最も重要でボリュームがあるのがこのランチ。前菜・メイン・デザートというコース形式が一般的です。「シエスタ(昼寝)」の習慣の名残で、昼食後はゆったり過ごすのが一般的。シエスタは都市部では短縮傾向ですが、地方では今も根強く残っています。
  • 18〜19時頃:おやつ(Merienda)
    昼食と夕食の間がかなり空くため、その間に小腹を満たします。パンやお菓子、フルーツ、あるいは軽めのタパスなどが定番で、カフェやバルで友人と過ごすことも。
  • 21時以降:夕食(Cena)
    遅い時間にスタートする夕食。サラダ、スープ、タパスなどで軽めに済ませることが多めです。週末や夏の時期には22時以降にスタートすることもあります。

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そんなに夜遅くご飯を食べて、翌朝普通に働けるの?と思いますが、意外にも日本と同じような時間帯に出勤している人をたくさん見かけますよ。

 

 

なぜこんなに遅いの?スペインの食事時間の背景

なぜこんなに遅いの?スペインの食事時間の背景

引用:Pixabay

スペインの食事時間は、海外からの旅行者にとっては驚きの連続です。「ランチが14時過ぎ?」「ディナーが21時スタート…!」という状況は、日本人の感覚ではなかなか馴染みにくいもの。でも、この遅さにはちゃんと理由があるんです。

 

タイムゾーンとサマータイムの影響

大きな理由のひとつが、スペインの「時計の時刻」と「太陽の動き」がずれていること。

本来スペインは、緯度的にはポルトガルやイギリスと同じ「グリニッジ標準時(GMT)」に属しています。しかし第二次世界大戦中、当時のフランコ将軍がナチス・ドイツと同じ「中央ヨーロッパ時間(CET)」を採用したため、国内の時刻が実際の太陽の位置よりも1時間前倒しになっているのです。

つまり、朝7時といっても体感ではまだ6時台。結果として、自然と朝が始まるのも遅くなり、食事のタイミングもズレていったと言われています。

さらに、スペインの夏は日照時間が長く、日が沈むのは21時〜22時頃。夜遅くまで明るいため活動時間が長くなり、その影響で夏はさらに食事時間が遅くなる傾向があります。

 

昼休みが2〜3時間ある「シエスタ文化」

もうひとつ大きな要因が、スペイン伝統の「シエスタ(昼寝)」の存在。

昼食後に2時間近くの休憩を取って午後を再スタートするという習慣は、かつては全国的に当たり前の生活リズムでした。シエスタは2016年に政府によって廃止とされたものの、特に地方や個人経営の店では、今もゆるく続いているところも。

昼休みが長いために午後の仕事が遅くまで続き、それに合わせて夕食もどんどん後ろにずれていった、というわけです。

 

社会的・文化的な背景

スペイン人にとって、食事は人と過ごす大切な時間

特に夕食は家族や友人とお喋りを楽しみながら、ゆったり過ごす時間として大切にされています。そのため、混雑を避けて遅めの時間に外食する人が多く、遅い時間の夕食が習慣として根付いていきました。

 

 

子どもたちも1日5回の食生活

スペインの国民食、パエジャ

スペインの国民食、パエジャ(引用:Pixabay)

1日5回の食事サイクルは、大人だけの習慣ではありません。

スペインでは、子どもたちも大人と同じように、1日5回の食生活を自然に取り入れて暮らしています。実際に現地の家庭や学校で見てみると、その習慣がいかに生活に根付いているかがよくわかります。

  • 朝食:自宅で軽めにスタート
    朝は登校前に軽い朝食をとります。ココアやミルクと一緒に、ビスケットやシリアル、パンなどをさっと食べて出発。
  • 午前の軽食:学校でおやつタイム
    10時〜11時頃になると、多くの小学校では「おやつタイム」が設けられています。家から持ってきたボカディージョ(スペイン風バゲットサンド)やフルーツ、ヨーグルトなどを食べて、もうひと頑張り。
  • 昼食:学校給食 or 家に帰ってしっかりと
    13時〜14時頃に取る昼食は、1日のメインの食事。給食の内容は大人のランチと同様、前菜+メイン+デザートのコース形式が主流です。

    スペインの学校給食は申し込み制になっていて、地域や学校にもよるものの、約半数の子どもたちが利用しています。家庭によっては、一度子どもが家に帰ってお昼を取ることも。このあたりは、シエスタ文化の名残でもありますね。

  • 午後のおやつ:学校後のひと息
    放課後や帰宅後には、再び軽食の時間。パンやお菓子、フルーツをつまみながら、宿題をしたり家族とお喋りしたりと、ゆったりした時間を過ごします。
  • 夕食:遅めの夜ごはん
    夕食も、大人と同様に21時ごろ。子どもも夜遅くまで起きていて、大人と同じテーブルで夕食を囲む家庭も多いのがスペイン流です。とはいえ、内容は比較的軽めで、胃にやさしいものが選ばれています。

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子どもはなるべく早く寝るもの、と思っている日本人からすると、ちょっと驚いてしまいますよね。

 

 

それでも健康?実はスペインは長寿大国

それでも健康?実はスペインは長寿大国

青魚を使ったピンチョス

1日5回も食事をして、ランチはボリュームたっぷり、ディナーは夜9時過ぎ…それだけ聞くと、なんだか健康に悪そうに思えます。しかしスペインは、実は世界屈指の長寿大国。

2025年の統計では、平均寿命が84.3歳。ヨーロッパ内ではトップ、世界でも第9位にランクインしているんです。ではなぜ、こんな自由な食生活を送りながら健康でいられるのでしょうか?

 

長寿の秘密は「地中海式食生活」

スペインの食文化を語る上で欠かせないのが、「地中海式食生活(Mediterranean Diet)」。これは、オリーブオイル・野菜・果物・魚介類・豆類・全粒穀物などを中心とした、バランスの取れた食習慣のことです。

たとえ揚げ物やパンがあっても脂の質が良く、健康に良いとされる青魚や野菜もたっぷり。しかも小皿で少しずつ楽しむスタイルが多いため、自然とバランスが取れているのです。

 

家族や友人との時間が心も支える

健康の秘訣は、食べ物だけではありません。スペイン人は、おしゃべりが大好き。家族や友人とのつながりをとても大事にしていて、食事や週末の集まりなど、団らんの時間がたっぷりあります。

コミュニティの繋がりが強く、孤立感や孤独感を感じにくいのも、長寿のポイントと言えそうです。

 

良く動き、よく休む健康的なライフスタイル

温暖な地中海性気候のもと、人々は自然と外に出る機会が多く、日常の中でたくさん歩きます。夏になればビーチに出かけ、太陽の光のもとでリフレッシュするのが習わしです。

また、スペインには「ソブレメサ(食後の団らん)」や「シエスタ(昼寝)」といった休む時間を大切にする文化もあります。仕事も遊びも食事も、急がず、焦らず、丁寧に楽しむ。ストレスをためない健康的なライフスタイルも、長寿の秘訣だと言われています。

 

 

旅行者はどうすればいい?スペイン流に合わせるためのヒント

バルに並ぶピンチョス

バルに並ぶピンチョス

ほかの国と比べて、かなり遅いスペインの食事時間。思い切って滞在中はスペイン式に合わせてしまうのも一つですが、慣れない土地で慣れない生活リズムになると、体調を崩すのではないかと不安になることもあるかもしれません。

しかし、少し工夫をすれば、スペインの食事時間をうまく活用して、無理なく過ごすことも可能です。

 

朝食とおやつで、お昼までのエネルギー補給を

まず大事なのが、朝ごはんをしっかり食べておくこと。お昼がどうしても遅くなりがちなので、パンやフルーツだけでなく、卵料理やハムなど、たんぱく質も取り入れてしっかりエネルギーを補給しておきましょう。

それでもお腹が空いてくる…という人は、午前中の軽食=アルムエルソをぜひ取り入れてみてください。スペインの人たちは、11時頃にバルやカフェでサンドイッチなどを食べて、小腹を満たしています。現地の人に倣ってこの習慣を真似してみると、かなり楽になりますよ。

 

しっかりお昼を食べたら、夜はタパスで済ませるのも◎

前菜とメイン、デザートまでしっかり出てくるスペインのランチ。ボリュームがある上にスタート時間も遅いので、夜になってもそれほどお腹が空かないことがあります。

そんな時には、バルでタパスやピンチョス(小皿料理)をつまむのがおすすめ。本格的なディナーは21時以降と遅めのスペインですが、バルであれば早い時間帯から、好きなものを好きな量だけ頼めるのも良いところです。

バルの利用方法と楽しみ方についてはこちら
サン・セバスティアン 食べ歩き!バル巡りのお店リストとtips

 

夜にレストランに行くなら、遅くなる覚悟で!

何かにつけてのんびりしているスペインでは、食事のペースもゆったりしています。日本のように、頼んだものが次々出てくるということも殆どありません。そのため、仮に21時に入店したとしても、食事が終わるのが23時頃、ということも。

夜にレストランでしっかりと食事をするなら、遅くなることは覚悟のうえで出かけましょう。また、次の日の朝は軽めにフルーツで済ませるなど、胃を休める時間を作るのもおすすめです。

 

どうしても食事時間が合わないと感じるときには?

それでもどうしても食事のリズムが合わないと感じるときには、スペイン料理以外のレストランを利用するのも一案です。アジア系・イタリアン・日本食レストランなどは、比較的早い時間から営業していることが多く、いざというときに頼りになります。

また、スーパーや市場で軽食やお惣菜を買って、ホテルの部屋で食事をするのも良いでしょう。特にハムやチーズは日本よりかなり手頃な価格で購入できるうえ、本当に美味しいですよ。市場では搾りたてのジュースなども購入できて、旅先のビタミン補給にもぴったりです。

 

 

まとめ|“遅い”を楽しむのがスペイン流

引用:Pixabay

この記事では、スペインの食文化に関するさまざまな情報をご紹介してきました。

  • スペインでは1日5回の食事が一般的(朝食2回+昼食+おやつ+夕食)

  • 昼食は14時以降、夕食は21時以降と食事時間がとにかく遅い!

  • 食事時間が遅い理由は、タイムゾーンのずれ・シエスタ文化・長い日照時間など複数ある

  • 意外にもスペインは世界有数の長寿国

  • 旅行者は朝食や間食を活用することで、無理なく現地リズムに対応できる

  • スーパーや早めオープンのレストランを上手に活用するのも手

最初は「えっ、ランチが14時?ディナーが21時!?」と戸惑うこともあるかもしれません。しかし、この遅さにはちゃんと理由があり、ある意味ではスペインの人々の価値観をダイレクトに感じる良い機会であるとも言えます。

あわただしい日本での生活リズムから離れて、スペイン流のゆったりしたペースを味わってみると、旅がさらに面白くなるかも?ぜひ一度、実際に体験してみてくださいね。

 

 

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